「死にたくなったらおいで。」
柔らかい笑顔で、男は救いの手を差し伸べた。
「俺が、直々にお前の生を終わらせよう。」


ああ、ああ。

あなたが、

歓喜の滴がじわりと膨れ、落ちた。たったひとつ。だが、男にはこれ以上要らなかった。
それを合図とし、高らかに叫ぶ。詩を詠まなくなってひさしいが、忘れることなどなかった。
だからこその狂気。それ故の大罪。

私を許すな。

叫びは轟く。届くだろうか、衰えただろうか。
俗世の痛みなど、感じない。

「冥府の王よ。
私は許されない。
だが、もし。もしその御心に私への情を頂けるならば、」

両手を広げ、目を閉じる。
「先程の御言葉通りに。わたしを、」


文字の縛りを超えた男の想いは、地の底で聞き届けられた。

慈悲深き王は、大鎌の一振りで終止符を打ち、男は穏やかな相貌を崩すことなく物申さぬ屍となった。